デザイナーは何から始めるのか?

どうも、内藤です。


デザイナーが仕事をするときに、
「何から始めるのか?」という
問いをされたときにすぐに

「これです。」

と答えられるでしょうか?

そして答えた後に、

「本当に?」

と聞かれても自信を持って、


「間違いありません。」


と言えるだけのものになっているでしょうか?


実は僕もこの問いには
すぐ答えることができませんでした。

この問いを人にされたときに、
真っ先に答えたのは

「要件を取り出すこと」

だったんですが、
要件ではありません。


芸大の入学試験を寝てても
受かってしまうような
天才デザイナーである友人も
実はこの問いに自信を持って
答えられてはいませんでした。

答えられてはいないんですが、
仕事では自然とやっていることなんです。
しかもめちゃめちゃバリバリに仕事ができる人で、
周囲からも天才と呼ばれるくらいのデザイナーです。


でも、改めてこういう問いをされると、
案外出てこなかったりするもの
です。

超一流は、
この無意識にやっているタスクも、
いつでも意識化できる
、と聞きます。


いつでも意識化できるということは
自分の中でコントロールできる状態で、
いつでも人に説明もできるし、
よりよくしようとできる
わけです。


今回、天才デザイナーすらも
自然とやりすぎていて、
意識化されていない、
仕事で一番始めにやる行為を
意識化していきます。


デザイナーは何から始めるのか?

その答えは、
クライアントの要求を聴くこと、です。

要するにヒアリングですね。

どうですか?


答えを聞けば、
当たり前じゃんと思うものですが、
「一番始めにやることはなんですか?」
と聞かれて、自信を持って答えられなかったのではないでしょうか?


もっと言えば、
ベテランの先輩デザイナーに

「本当に?」

と聞かれても、怯まずに

「間違いありません」

と言えるだけの確信はありましたか?


多くの場合、そうではないのです。
僕も天才デザイナーの友人も
そうでしたからそんなものです。

でも、今はそれが
意識化された状態ですから、
ぜひこの「クライアントの要求を聴く」
という工程に意識を置いてみてください。


ただ今回このネタバレをして
終わってしまっては、
意味がありませんので、
この「要求を聴く」工程に
詳しく触れていきます。

以前、デザイナーとは何をする人か?
という問いを出し答えを共有しました。


覚えていますか?


長かったので、
すっかり忘れてしまっているかと
思うので、改めて共有します。


デザイナーとは、
ある目的に向かうエネルギーが
滞らないように全体の成り立ちから
必要な機能を見出し、
その機能を明確な形に表す人
でした。


詳細は過去の記事を読んでいただければ
と思いますが、実はこれ順番も表しているんです。

<順番>
ある目的を見出す
全体の成り立ちを捉える
ある目的に向かうエネルギーが滞らないように全体の成り立ちから必要な機能を見出す
その機能を明確な形に表す


解説した記事では、
この前半がデザイナーの肝になる部分で、
本質的なアイデアを出す部分

後半は実行可能なアイデアを出す部分
でした。


明確な形に表すだけであれば、
それこそオペレーターでもできるのです。


さて、この一文からわかるように、
デザイナーは”ある目的”を
見出す必要があります。

これを見出すためには、
クライアントの要求を聴かなければ
見出すことなんてできるわけない
のです。

当たり前といえば、当たり前ですよね。


こんな小難しい話をしなくとも、
仕事なのだから、
仕事の成果物を上げるために
クライアントの要求を聴かずに
デザインを作ることはできない、

だから、
クライアントの要求を聴くことが大事だ 

といえば、理解しやすいでしょう。

知ってる人は知ってるはずですし、
デザインの仕事をしたことがなくとも
「ヒアリングをするんだな」
と思っている人も多いでしょう。


しかし知っているにも関わらず
案外これができない人が多いのです。

以前、ちょっとしたワークに参加した時の
話が、ドンピシャなので、その時の話をしましょう。

どんなワークかというと、
僕らはコップメーカーのデザイナーで、
社長から「万能コップを作って欲しい」という話から
「万能コップをデザインする」
というワーク
です。


そのときに参加したのは、
僕、天才デザイナーの友人、
駆け出しの新人デザイナー2人
といった感じでした。


そして社長役の人が、
いきなりやってきて、
概要を伝えるのです。

チームとしてその話を聞き、
終わった後に社長の要求について
ホワイトボードに書き出してみたんです。


すると、4人いたメンバーの意見が少しずつずれたんです。


中には、社長が一言も言ってない内容を
出し始める人もいました。


つまり、同じタイミング、同じ場所で、
同じ内容を聞いているにもかかわらず、
人によって聴いた要求内容にずれが生じた
んです。

不思議ですねぇ。

そのときに社長が言ってた話題としては、

・万能コップを作って欲しい
・ヒット商品を作りたい
・ものが少ない方が豊かさを感じるというデータを聞いてきたから
「このコップ1つさえあればいい」
と顧客に言わしめるコップを作りたい


この3つです


にもかかわらず、メンバーの中には、

・社内を盛り上げたい
・会社を再建したい

と社長が言ってたという発言をする人もいれば、

・ブレイクスルーを起こしたい


と言っていた、発言する人もいたんです。

社長は一言も社内を盛り上げたいとも
会社を再建したいとも発言はしてませんし、
ブレイクスルーを起こしたい、
という発言もしてませんでした。


もしかして社長の意図としては、
社内を盛り上げたいという意図や
ブレイクスルーを起こしたいという意図は
あったのかもしれませんが、
発言そのものは存在しないのです。


それこそ社長に意図を
確認しなければわからない。

にもかかわらず、それを言葉として
新たに生み出しているメンバーがいました。


以前からよく書いている内容ですが、
日本人はハイコンテキストで物事を理解しあえる人種です


だから、なんとなくの雰囲気で感じ取ってしまうのでしょう。


そのワークで、社長役の人の演技がうまかったのかもしれません。


しかし、そんな設定や発言は
一切ないにもかかわらず、
あるデザイナーは社長の要求とは別に
違うものを作り出して、
「社長はこんなことを発言していた」
とチームに提示してきている
のです。


これは困ったことです。


これはデザイナーに限りませんが、
仕事の成果物はクライアントの要求に
よって決まる
ものです。
    
  


要求通りのものを作るのが仕事です。
何せそれが約束ですから。


また要求を聴き、
そこからある目的を見出し、
適切な機能を表せたものを提示し、

「これが欲しかったんだ」

と言われるほどの、
クライアントを喜ばせるものを
出せるのであれば、
それは最高の仕事
でしょう。


しかしそれも、
要求がどれだけ適切に聴けているか?
で変わってくる
のです。


適切に聴けないかかわらず、
自分勝手なものを作ってしまっては、
デザイナーとは言えませんし、
そもそも仕事として成り立ちません。

さぁあなたはちゃんと
聴けているのでしょうか?

実は聴くという行為は
ものすごい難しい行為
です。

自分は人の話が聴けている、
と持っている人ほど、
大抵、聴けていません。


僕がよく感じるのは
「話をするのが好き」という人ほど、
一切、人の話を聴いていない印象があります。


要は、自分の話ばかりで
相手の話に耳を傾けていない
のです。


相手が話すタイミングを作らないのです。
相手に問いを投げかけることもしません。

そして、そういう人ほど、
間や沈黙を怖がります。


相手が話始める機会を奪っていることに
気づいていない
んです。


僕も比較的に話好きなので、
人の話を本気で聴くときは、
ものすごく意識しますし、
ちゃんと聴けるようになるまで
かなり練習しました。

聴くという行為は認知機能の1つです。

ですから、
物事を正確に認識するためには
避けて通れない能力
です。


とはいえ、適切に訓練すれば、
ちゃんと聴けるようになるものです。


聴くという行為は、
単に耳から情報を入れる、
というだけではなく、

話をしている相手の態度、声のトーン、
雰囲気、表情、言葉遣いなど、
その全てに意識をおき、
情報を集めて理解していくこと
です。


もう少し言葉を付け加えると、
自分の情報空間と相手の情報空間と
厳密にすり合わせていくイメージ
です。


「AはAだよね」っていう感覚です。

これを多くの人はやらないのです。
相手がAと発言したら、

AっぽいBみたいなものを勝手に想像して、
AとBがずれていることを気にせずに、
方やAの話をして、方やそれに似てるBの話をしてるんです。

例えば

「昨日、公園に行ってご飯食べたんですけど、そこのいた犬が面白いことをしていて〜」

という話を相手がしてたとすると、

聴く側っていうのはこの時点で
言葉すべてがずれてるっていう認識をした方が良いです。


この時、脳内で意識することは

・公園ってどんなところなのか?
・昨日って具体的に何時?
・公園行ったみたいだけど1人だったのか?
・ご飯はどんなものか?
・いつ食べたのか?
・そこってどこか?
・犬とはどんな犬か?
・オスメス?
・面白いって何か?

などなどです。


これらが自分のイメージとずれている
という想定をしつつ、興味を持って
相手の話に耳を傾ける
んです。

流石に僕も日常会話でここまで
厳密に意識しませんから、
こういう会話の場合は
概ねスルーするわけですが、

仕事の場合、要求に関連するワードは
基本的にずれとなりうるものは極力把握しようと努めます。


今、文章で書いてるので
「流石に間違えることないだろ」
なんて思うかもしれませんが、
耳で聴くという行為は相当難易度が高いのです。


曖昧な言葉の羅列が多数ありながら、
リアルタイムでどんどん進んでいくんです。


そして情報もどんどん増えていきます。
新しい単語も出てくるかもしれませんし、
さっき言った言葉と似たような言葉も出てくるかもしれません。


でも全く同じじゃないかもしれません。
人によっては途中で話が全然変わるなんてこともよくあります。


そして、相手が喋っていることが、
相手が勘違いしてないか?
間違ったことを言ってないか?
みたいなことを全体を想像しながら
リアルタイムでチェックしていくんです。


こうやって書くと難しいでしょ?:笑


だから
聴くことに徹しなければ、
聴けない
んです。


謙虚で真摯に捉えなければ、聴けません。

そしてこれを本気でやろうと思うと、
ものすごく集中力と体力を使います。


大抵の人は、聴くではなく聞くになっています。

だから、なんとなく雰囲気で感じ取って、

「あーわかるわかるー」

なんていう安直な発言ができてしまうのです。


でもよくよく深く聴いていくと、
全然違う話をしていた、
なんてことはものすごくたくさんあります。

ぜひ注意してみてください。

目次

聴けるように練習しよう。

デザイナーの始めの仕事は、
クライアントの要求を聴くこと
です。


ですから、要求を捻じ曲げないように、
まずは聴けるように練習しましょう。


聴くためには、相手と自分が
全く異なる情報空間を持っている
という前提にたち


言葉1つ1つ丁寧に捉えてみましょう。

そのために

・間を恐れない
・相手の立場に立つ
・相手に興味を持つ
・すぐにわかったふりをしない

こういうことをすることです。

人と話をしていて、
この人は聴けない人だなー
と思う人の特徴っていうのは
やっぱりあるものです。


これらは代表的な例です

・相手が話をしているのに、
 それについて深掘りしない
・頷きはするけど、確認はしない
・言葉のずれを共有しないし、疑わない
・相手の感情を聴き出さない
・相手の状況を確認しない
・すぐに「わかった」とか「共感」して、自分の話をする
・どうして、なぜを使わない


もし自分が本気で
聴こうとしているときに、
そうなってるな、と思ったら、
ぜひこの逆をしてみてください。


それだけで、
聴く精度がものすごく上がるはずです。


聴く精度を上げれば、
クライアントの要求を捉える精度も
上がりますから、仕事の精度も
グッとあげられる
でしょう。


今回は以上です。
ヒントになれば良いのですが。

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